Column

パッケージデザイン ウラ話

パッケージデザイン ウラ話

僕がパッケージデザインの仕事をしている時、最も大切にしていることは、誠実さである。
そのデザインに嘘っぱちを込めたくないし、ことさらに良い部分を強調するのは、なんと言うか気が引ける。ただし僕はあくまでも社外のデザイナーなので、製品の仕様そのものに口を挟むことはできない。だから僕はパッケージの裏側ではせめて、誠実であろうとしている。

お手元に何かしらの食品パッケージがあれば、パッケージをひっくり返してぜひ裏側を見て欲しい。原材料表示や栄養成分表示の文字が、ぎっしりと書かれているのが目に入ると思う。これらには細かい規則があって、例えば文字の大きさはこれくらいじゃないといけないとか、原材料は使用量の多い順に記載しなければならないとか、法律で定められた規則が色々とある。だが言い換えれば、規則さえ守ってしまえばあとはどうしようと自由なのだ。ものすごく文字を横に潰してみたり、文字の間をギッチリ詰めてみたり、見比べてみると、各社様々なやり方で裏面表示が作られているのがお分かりいただけるだろう。商品ラインナップが極端に多い会社では、流し込みと言って、定められたスペースに文字をとりあえずぶち込んで終わり、と言うこともある。それはそれで合理的だし別に法律に違反しているわけではないから、何か言われる筋合いはないだろう。

だが僕は思うのである。この裏面表示というのは、製造会社の誠意が現れるのではないだろうか、と。平成の初め頃、食品偽装事件が大きくクローズアップされた時期があった。ことに日本人は食の安全に対して非常に意識が高いのだなと思った。しかしよくよく調べてみると、食品偽装というのはほとんど素人にはわからないのだそうだ。専門機関が調べて初めてわかる、あるいは内部からの通報で事件が発覚するケースがほとんどなのだ。

だからこそ製造会社はルールを守って、決められた原料を使っておいしいものを作って、安全基準や衛生状態を守った製造ラインで商品を作る。その最後の証明書が裏面表示なのだと僕は思う。

だから僕は裏面表示にとことんこだわる。読みやすいように文字の間を一文字一文字整えて、読みやすい位置で改行をしたりして、誰にでもわかりやすい裏面を作っている。

少し例を上げてみる

下図を見ていただきたい。前述した、単に四角いスペースに文字情報を入れただけの流し込みと、それを調整したものを上下で比較している。

明らかに下側の調整後の方が読みやすくないだろうか?ほんの少し手を加えるだけで、これくらい違って見える。

主な調整点は、赤字を見ていただきたいが、決められたスペースに入れようと思うと、自ずと文字の横幅を使って調整することになる。この例では100%ではスペースに入らなかったので、文字を90%横に潰している。もうこの時点で少し読みづらくなる。さらに機械的に改行しているので、言葉が途中で切れてしまっている。小麦、ポークエキスなどがこれに当たる。これらを解消するために、調整後では、一文字一文字間隔を調整して、改行位置を整えている。こんな地道なことも、実はパッケージデザイナーがやっていたりする。

おまけ

お気付きの方もいらっしゃると思うが、実は最初の表示原稿にはいくつか間違いがある。基本的には、製造会社から送られてきた原稿データをそのまま使うのだが、その原稿が間違っていることも稀にあり、今回もこちらで少し変えてある。修正点は3箇所あるが、最後に答え合わせを記載しておくので、お時間のある方は間違い探しに挑戦してみてはいかがでしょうか。

答え

1.()が半角になっている
2.アミノ酸等がアミノ三頭になっている
3.高温が高音になっている
でした。

※表示内容は全て架空のものです。

以上、お読みいただきありがとうございました。
デザイナーS.S.

おいしいパッケージデザインならYAOデザインへご相談ください